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【先生の本棚】「正しい」とはどういうこと?『これからの「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学―』

2024.08.01

『これからの「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学―』(早川書房)Michael J. Sandel(著)、鬼澤忍(訳)

オービットでは、授業の延長線上で社会問題に話が及ぶことがあり、生徒の皆さんから「○○が正しい」「××が悪い」といった意見が発せられることもあります。しかし、そもそも「正しい」とは何なのでしょうか? 多くの人が幸福になれば「正しい」のでしょうか? 個人の自由が尊重されることが「正しい」のでしょうか?

そういった正解の無い問いに対して、様々な主義や視点から多角的に出来事を捉えるのが本書『これからの「正義」の話をしよう』です。10年以上前の本ですが、意見が複雑に多様化する現在に生きる皆さんにこそ読んでいただきたい一冊です。

例えば、「高所得者ほど多くの割合で税金を支払うべきか」——この問いに対して皆さんはどう考えますか?
功利主義者(社会的なメリットの総和を尊重する主張人)なら「社会全体の幸福がコストを上回るなら、支払うべき」と考えるかもしれません。逆に自由主義者(個人の権利・自由を尊重する人)は「個人の努力で稼いだものは個人に帰属する。税金の割り増しには反対」と答えるかもしれません。

このように、現代社会の問題に関して様々な視座が得られます。広い視野、多角的な視点を手に入れたい人は、ぜひ手に取ってみてください。

副教室長 今村