本屋へgo! 柴本淑子さん
2023.11.01
本屋へgo! 柴本淑子さん
お茶の水女子大学文教育学部卒業後、日本経済新聞社入社
1991年に銀行勤務の夫の香港転勤のため日経を退社。
4年半の香港在住中、現地の邦字新聞『香港ポスト』に勤務。当時小学生だった一人息子は香港インターナショナルスクールに通い、並行してオービット香港校で後藤先生の熱血的な中学受験指導を受ける。慶應2校に合格。
1996年に帰国後は、1997~2010年の15年間で4誌の編集長を務めた。
①育児雑誌『ひよこクラブ』(ベネッセ)
②マタニティ雑誌『たまごクラブ』(ベネッセ)
③40代向け女性誌『マイ・フォーティーズ』(主婦の友社)
④シニア誌『毎日が発見』(角川)
現在は自前の編集プロダクションで、料理動画の制作、料理本の執筆、ゴーストライタ―業の傍ら、キーコーヒー㈱の社外取締役を務める。
趣味は水彩画、ゴルフ、阪神タイガースの応援。
もっと本屋へ行こう
長い間出版社に勤務していた私が「もっと本屋に行きましょう!」と呼びかけても、あまり説得力はないかもしれません。「どうせ、本を買ってほしいんでしょ」と言われるのがオチで、あながち間違ってはいないからです。それでも私はこう言い続けます。「本屋に行きましょう!」
本屋の数は年々減っている
今は「本離れ」が顕著です。本を読まなくても、ネットがなんでもすぐに教えてくれます。ネット書店に注文すれば、欲しい本が翌日家に届きます。時間も電車賃もかけずに欲しい本が手に入るのですから、わざわざ本屋に行く必要はありません。そのため全国の本屋の数は年々減少。1998年に約2万2000軒あった本屋は、毎年3~5%のペースで減少し、見事な右下がりの線を描いて2020年には約1万1000件に。22年間で半減しています。 いつも立ち寄っていた本屋が閉店してしまい、看板だけが名残をとどめるという寂しい光景は全国で見られます。地方に行くと、本屋が1軒もないという町は珍しくないのです。
そもそも本を読まなくなった
「あなたは1カ月に何冊の本を読みますか?」というネットの調査(10~60代男女)でいちばん多かった答えはなんと「読んでいない」でした。時間がない、活字は苦手、本を読まなくても困らないなど理由はさまざまですが、人類の英知が積み重ねてきた最強のツールをみすみす手離すのはあまりにもったいない。それが本屋の数を減らしている原因のひとつになっています。
本が未知の世界に連れて行ってくれる
本は読んでみなければ面白いのか面白くないのか、役に立つのか立たないのかがわかりません。ときには「ちっとも面白くな~い!」と投げ飛ばしたくなる本もあるでしょう。お金の無駄だったと地団駄を踏みたくなることもあるでしょう。そうなると、新聞や雑誌の書評で紹介された本や、賞をとった本を選びたくなります。そんなお墨付きがあれば、ハズレに出会うことはまずないはず。でも、そうやって人の基準に頼っていては自らの勘を養ったり、思わぬ面白さに膝を打ったりするチャンスはありません。旅や読書は自分を未知の世界に連れて行ってくれるもの。行ってみないと何があるかわからない。だから胸が躍るのです。
本屋に行く最大のメリットはコレ
さて冒頭の呼びかけに戻ります。なぜ本屋に行くことが大事なのか。それはあちこちに目が行くからです。「面白そうだな」と思った本の隣を見ると、さらに面白そうな本が並んでいたり、同じようなジャンルの本がいくつもあったりして、あちこちに目が行く。どれにしようかとぱらぱらめくったり、表紙を比べたりして迷う。ちょっと目を転じれば、「あ、こんな本もある」と別コーナーにふらふらと足が向く。 それがいいのです。それが本屋の楽しみなのです。ネットで注文すると、その本だけしかお目にかかれませんが、本屋ならいくらでも最新の本と戯れることができます。「思わぬもの」に出会えるのです。自分の欲しい本が店内のどこに並んでいるかは、世の中のポジションを知ることにも繋がります。本屋のいちばん目につくところに積んであれば、それが世のトレンドだと解釈できるのです。
どちらが楽しいですか
森の中の1本の木を探すのに、わき目もふらず一直線に向かうのと、森のあちこちを散策して自然に触れあいながら探していくのとどちらが楽しいでしょうか。どちらが気持ちを豊かにしてくれるでしょうか。
おまけに
ポルトガルのポルトにあるㇾロ書店は世界一美しい本屋といわれ、観光名所にもなっています。あまりに人がたくさん訪れて混雑するので、ここは入場料をとるのです。え、本屋なのにぃ? 本を買えば入場料分(5ユーロ)は引いてくれます。一度訪ねてみたいですね。