『ボッコちゃん』（新潮文庫）星 新一（著）

住む場所や生きる時代が変わると、人間は新しい「前提」や「環境」に適応することを、否が応でも求められます。それらに備えるためには、時代を先読みする力（先見性）を鍛えていくのもひとつの手ですが、私は適応力・順応力・受容性を高める方が簡単だと考えています。

Science Fiction（SF）、とくに本作のような「ショートショート」に触れることは、このような力を磨いてくれるお手軽な方法だと考えています。自分の常識が通用しない世界に次々と誘（いざな）ってくれるので、イメージトレーニングに最適です。

本書に収録されている『肩の上の秘書』は、世の中の誰もが「肩に乗せるインコ型の機械」に代わりにしゃべってもらうという、「コミュニケーション能力」を機械が代替してくれる世界。人間が持つ様々な能力――それによって、世の中から「優秀」と言ってもらえることもある――は、いずれ全て機械に代替されていき、「優秀な人間」の定義が変わっていくのだろうなと感じていました。

ショートショートなので１話あたり3～5ページと短く、小学校高学年でも十分に理解できるブラックユーモアもあり、読んでいてとても楽しい一冊です。

教務主任　浜田昌樹