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「過程」を楽しみながら進んだ研究者への道 末木 杏奈 さん

2015.10.08

「過程」を楽しみながら進んだ研究者への道 末木 杏奈 さん

末木(WEB掲載用)

現在:EMBL (European Molecular Biology Laboratory) Heidelberg, Pre-doctoral Fellow (Germany, Since August 2015)
進学先:University College London, BSc Biochemistry First Class Honours (UK, June 2015)
Frankfurt International School, IB Bilingual Diploma 44 points (Germany, June 2012)
その他合格校(大学受験):Imperial College London, University of Bath, University of Bristol (全て BSc Biochemistry)
受講歴:小4βコース~中3βコース 日本人学校中学部中3卒業

オービットとの出会い

小学4年のとき、日本から来星し、シンガポール日本人学校に入学しました。そして、シンガポールにあるいくつかの日系塾の体験入学をしていたとき、オービットでの授業がとても楽しく、そのまま入塾しました。それから中学卒業までの5年間、主に日本への高校受験に向けての勉強をしました。そして、ドイツのインター校への入学が決まってからは、その準備などもサポートしていただきました。

オービットで学んだ「過程」の大切さ

オービットの5年間で学んだことを一言でまとめるのは難しいのですが、勉強の仕方、そして、学ぶことの楽しさを教えていただいたと思います。その中でも一番に自分が思いつくのは、「答えが合っていても、解き方や、その理由がわかっていなければ意味がない」、という問題解決の過程の大切さです。オービットでは間違った答えを消しゴムで消すことはダメだと教えられました。そうではなく、なぜ間違えたか、そして、どうしたら正しい答えにたどり着けるのかを、問題を間違えるたびに考え、記していた記憶があります。
例えば、数学の公式一つにしても、ただ公式を覚えるのではなく、その証明や導き方も学習し、ノートにまとめていました。そして、過去問を解いた後には「リベンジノート」を作り、間違えた問題を書き、間違えた理由を探し、解き直すという学習を繰り返していました。

高校受験でなくインター校に進学

私は、オービットで約5年間、高校受験の勉強をしていたにもかかわらず、日本の高校受験をせずに、父の赴任先であるドイツのインター校に進学することにしました。今、振り返ってみると、オービットで日本人学校生のみでなく、インター生とも共に授業を受け、関わることができたことがインター進学を決めた理由の一つなのかな、と思います。そして、オービットで勉強している中、将来のことを考えたときに、まだ進みたい方向が決まっていなかったこと、そして、英語ができるようになりたいと思い、日本人中学校卒業後、インター校に進みました。
その際、周りの人からは、「今までの高校受験用の勉強が無駄になるのではないか」「もったいない」などと言われましたが、私自身はその時も今も、そう感じたことはありません。当時は勉強をすることが好きだとは正直、感じてはいませんでしたが、今考えると、本当に「学ぶ」ということを楽しんでいたのだと思います。
オービットほど勉強を楽しめた時は、後にも先にもありません。インター校進学を決めたあとも、オービットの先生方は、とても親身になってサポートしてくださり、TOEFLや高校数学の対策をしてくださったり、インター生の話を教えてくださったりしました。その他にも、私の両親にインター校の事情や、心構えなどを説いてくださったそうで、両親も感謝しております。オービットでなければ、もっと周りに反対されていたと思いますし、自分もインター校に行く決心はできなかったと思います。

インター高校での生活

インター校入学後は、初めは英語がしゃべれず苦労しましたが、半年でESLを抜けることができ、IBDPを取ることができました。数学はオービットでの高校受験対策、そして、プライベートレッスンで準備した高校数学の知識のおかげでほとんど苦労することなくIBまで進み、Math High を取ることができました。インター校では応用を求められる問題が少ない分、少しひねった問題に苦労している生徒が多い中、高校受験対策をしていた私は比較的、楽に過ごせたと感じます。
また、英語の文学の授業や社会系の授業でも、オービットの国語や英語の長文読解で難解な文章の全容を把握する力を鍛えていただいていたおかげで、英語が拙いながらも、何とか授業や課題をこなすことができました。大学生になってからも教科書、論文等を読むときに、この経験のありがたさを感じます。

興味のある分野を絞り込んで大学や学部を選ぶ

大学では、高校までとは違って、自分から勉強しなくてはならない機会が圧倒的に増えます。また、同じ様な学力の学生が集まるので、平均点を超えることも決して容易ではありません。その様な環境で意気消沈したり、焦ったりしてしまう学生がいる中で、私は比較的マイペースに勉強を続けることができました。それは大学に入るときに、いい成績を取るためでなく、将来何をしたいかを見つけるために大学に入ると考えていたからだと思います。それはまさに私がオービットからインター校に進学した時に考えていたことと同じです。当時は、何を勉強したいかを見つけ、それを勉強できる環境に行くためにインター校を選択しました。そして、大学進学では生化学を選び、大学では次になにをしたいかを考え続けました。

医学部でなく生化学の研究者を選んだ理由

大学への進路を決める時にも、理系で成績が足りていたため周りが医学部を勧める中、自分自身に人を救いたい、病気を治したいといった強い意志よりも、身体の仕組みや、身体の中で起こる化学反応への興味の方が強いと感じたため、生化学 (Biochemistry) を勉強することを決めました。このように、自分が何をしたいか、何に向いているのかを冷静に考えることができたのも、オービットでの高校受験の準備等で志望校を決めたり、志望理由を考えたりするなどして自問自答し、先生方に聞くという経験があったからだと思います。
そして、自分の進みたい道が決まってからは、それまでは日本の大学を受験しようと考えていたものの、専門性が高いと思い、イギリスの大学を受験しました。周りの日本人の生徒たちが皆、日本の大学へ行く中、海外の大学に行くことに抵抗が無かったのも、シンガポール時代にオービットからオーストラリアなどの海外大学に進学する先輩方を見ていたからかもしれません。
その後、高校で生物学に興味が出てきた私は同じように現象の「過程」に興味を持つようになりました。例えば、人間の胃にはペプシンという分解酵素があります。その存在を習ったとき、どうやってペプシンは作られるのだろうか、なぜ胃は酸性なのだろうか、と言った疑問を持つようになりました。そして、私は分子レベルの生物学、生化学や分子生物学の研究分野に辿り着きました。

タンパク質の研究から複雑なネットワークを解明していく研究に勤しむ

その結果、生化学への興味、そして、生物学の基礎研究への興味が強まり、大学院への進学を決意しました。
今はPhD (博士号) の取得を目指し、ドイツの研究所で勉強しています。今は研究者になること夢見ていますが、今まで何度も方向性を間際に変えてきた自分を自覚しているため、今後自分がどの道に進むのか、予想がつきません。しかし、数年後に博士号を取得して、先生方にいい報告ができるよう、日々、勉強と研究に勤しんでいきます。
今、私が一番興味を持っているのは、生化学の中でも、タンパク質のネットワークです。私たちの身体の細胞1つ1つのなかでは、数え切れないほどのタンパク質が作られ、互いにシグナルを送り合い、情報を伝達しています。細胞、そして、現象を理解するには、それぞれのタンパク質の研究、そして、それらをネットワークの全体図に作り上げていくことが重要です。今の研究所では、その複雑なネットワークを、実験、そして、パソコンを使ったモデルの構築やシミュレーションを組み合わせることにより解明していく研究に携わっています。
そこにある知識、結果、情報に対して、なぜだろう、と常に考えるには科学の世界においてはとても大事なことだと、大学を卒業したばかりの私でも感じています。私がそういう風に考えられるようになり、理系の研究の道に進んだのも、オービットで勉強の仕方を学び、常に答えの理由を理解しようとする習慣を身に付けることができたからだと思います。

オービット生へのメッセージ

オービットで過ごした5年間、今では随分と前に感じますが、今でも先生方の言葉やエピソードを思い出す瞬間が多々あります。オービットで学んだことは勉強だけではなく、人としての考え方そのものや、共に勉強するオービット生との絆というのは、私にとってのかけがえのないものとなりました。
そして、今回、7年ぶりにシンガポールを訪れた際にも暖かく迎えてくださり、嬉しかったです。自分が習っていた先生方が今もいらっしゃって、受験生が必死に問題を解きながらも、和気あいあいとしている様子がとても懐かしく、そして、なぜだかほっとしました。
今のオービット生の皆さんには、元気に仲良く、そして、たとえ苦しくても、先生方が厳しくても(私は当時の先生方に褒めていただいたことは5年間で数えるほどしかありません)、その経験が将来どの道を選ぶにしても役に立つことを信じて、頑張ってほしいな、と思います。(2015年7月記)
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7年ぶりにオービットを訪問してくれました!!