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後藤敏夫の注目の大学② ~東京都立大学~ 前編

2025.07.15

今回は東京都立大学について解説します。

東京都立大学について

「東京都立大学」は、「都立大学」という名称で広く知られています。それは、東横線に「都立大学」という駅があることから一般的に知名度が高いのだと思います。しかしながら、東横線の「都立大学」には「東京都立大学」はもはやありません。1991年に現在の南大沢に移転しています。*1その隣の東横線「学芸大学」駅に「学芸大学」がないのと同様です。(学芸大学は1964年に東小金井に移転しています。)*2

東京都立大学は全体生徒数約9100人(2024年5月1日時点)*3の中規模な総合大学です。東京都唯一の公立大学でもあります。2005年に4つの大学、「東京都立大学」、「東京都立科学技術大学」、「東京都立保健科学大学」、「東京都立短期大学」を統合して「首都大学東京」となり、その後、「東京都立大学」(以下、都立大)と、再度、名称を変更しました。*4

現在キャンパスは、南大沢、日野、荒川、晴海など複数にあり、1年次は南大沢にてほぼ履修しますが、2年次以降は学部学科によってキャンパスが異なります。詳しくは都立大のURLを参照してください。
https://www.tmu.ac.jp/

7学部編成の強み

現在の都立大は、7学部で編成されています。*5

この7学部編成は時代の要請にかなっています。その特長は当職が繰り返し述べている以下の3つの要素を満たしています。

 ① 専門性の高い理工系の専門分野
  (ア) 都市環境・都市計画
  (イ) インダストリアルアート
  (ウ) 生命科学
 ② 文理を横断した学習
 ③ アカデミック英語を重視したカリキュラム・プログラム

理工系の専門性が高い研究・教育に特化している

STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics) にアート・リベラルアーツの’A‘が加わった、STEAM教育*6が提供されていることです。このSTEAMをもって都立大の理工系の教育をユニークなものとしています。

都市環境学部

世界でもトップクラスの人口数を誇る都市である*7一方、都下から遠隔地に伸びる豊富な自然遺産をもつ東京都の公立大学としての意欲が見えます。ここでは、快適で活力がある都市づくり、自然豊かな観光資源を数多く有する東京都のすそ野までの広大な研究と計画、それに携わる人材の育成を目指す必要があります。都内および都下の一部地域では高齢化や過疎の問題も大きな社会問題となっています。

そのため、東京都の都市計画は経済、文化保全、自然・資源、建築、インフラ、福祉などの多数の分野を総合的に配慮する必要があります。こうした背景から、この都市環境学部の研究体系がうまれているのでしょう。東京都が目指す都市づくり、これは、23区内ばかりでなく、広く都下に至るまで、各種プロジェクトにこの大学の研究が活かされ、各種プロジェクトの内容を押し上げていく構想でしょう。

また、東京都のこの都市計画が、モデルとなり、今後、広く全国の都市計画プロジェクト、ひいては、経済が発展途上の地域・国等で都立大での研究が活かされていくことを期待します。2027年度入学から提供予定の英語学位プログラム(学部)*8が開始すれば、特にアジア等の発展途上の国出身の生徒にも魅力的なプログラムとなりそうです。英語学位プログラムについては次回の後半で触れます。

都市環境学部 地理環境学科

多岐にわたる地理学・地形学を基礎から学べる日本でも珍しい学科です。南海トラフ地震が予測される中、都市計画の中でこの地理・地形学が学部に組み込まれているのは必定でしょう。


豊富な観光資源を活かした仕事に興味のある生徒たちには、この学科はお勧めです。地形学、気候学、海洋学、気候変動、地震・自然災害などが学べます。自然の成り立ちや特殊性、気象による影響、地域の違いなどを野外のフィールドワークもしながら研究ができ、自然保全や、リゾート計画などにその研究や知識が活かせるでしょう。地理情報学研究室では、複数のAIによって構成された、タスクを自律的に実行できるマルチエージェントシステムを用いた、洪水時の避難行動シミュレーションなどの研究もあります。*9*10

都市環境学部 観光科学科

観光を経営などビジネス系や経済活性の分野と融合したプログラムは多数ありますが、科学的・工学的な観点や文化・芸術の保全も目的にした街づくりの一環として学べる学科は珍しいと言えます。*11日本ではオーバーツーリズムの問題の対応が迫られているので、観光に携わる仕事で複合的な専門知識を持った人物の需要は増していくでしょう。

(続く)

 

2025年7月9日

後藤敏夫
オービットアカデミックセンター 代表
ワールドクリエィティブエデュケーション CEO

 

脚注

*1 トリコネ(2020),旧東京都立大学キャンパス移転の顛末,トリコネ。
*2 東京学芸大学(2018), 東京学芸大学大学史テキスト, 東京学芸大学。
*3 東京都立大学(2024), 学生数, 東京都立大学。
*4 東京都立大学(n.d.), 大学概要, 東京都立大学。
*5 東京都立大学(n.d.), 学部・大学院, 東京都立大学。
*6 STEAM JAPAN (n.d.), STEAM教育って?, STEAM教育JAPAN.
*7 James Cutmore (5 Dec 2024), Top 14 largest cities in the world, BBC.
*8 東京都立大学(n.d.)、2027年度 英語学位プログラムに係る入試の実施について (都市環境学部)(予告)、東京都立大学。
*9 東京都立大学(n.d.), 都市環境学部 地理環境学科、東京都立大学。
*10 Anna Gutowska (2024年8月6日) ,マルチエージェントシステムとは, IBM。
*11 東京都立大学(n.d.),都市環境学部 観光科学科, 東京都立大学。