【先生の本棚】世界を変えた一冊『沈黙の春』
2023.07.28
『沈黙の春』(新潮文庫) レイチェル・カーソン(著)青樹簗一(訳)
「環境汚染」という言葉がまだない時代に、農薬等の化学物質の危険性を公にした古典的バイブル。1962年の発売と同時に、化学系企業からアメリカの大統領までも巻き込み、一大センセーションを起こしました。世界が環境問題に取り組むきっかけになった、まさに世界を変えた1冊といえるでしょう。
カーソンは、農薬を使用しない代替案として、ある地域に複数種の木を植えることが害虫発生や病気を防止するとして、生物の「多様性」の必要性を訴えました。
これをアナロジカルに読み解くと、人間社会においても「多様性」を認める空間の必要性として捉えられます。教育の現場に身を置く者としても、この「多様性」が保証された学習空間の方が、ものごとを多面的・複眼的な視点で捉える目を養えることを実感しています。
名著とよばれるものは、ジャンルを問わずいつの時代でも通じるものだ、と改めて感じさせてくれます。たくさんの名著に触れることで、その分野の見識を深めるだけではなく、他分野にも通じる新たなものの見方や気づきを得られる「一粒で二度おいしい」読書をしたいものですね。
教室長 満仲 孝則