【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】2020年 教育改革はどうなる?
2020.02.15
オービット会員の皆さん、明けましておめでとうございます。 昨年は年号が令和に変わり、新しい時代が始まりました。ナショナリズムの大きなうねりと、所得格差の拡大に、世界中が翻弄された年でありました。世界情勢は劇的に変化。UKは下院議員選挙で与党保守党が勝利、いよいよEU脱退への秒読みが始まりました。 香港の混乱は収拾の兆しもなく、台湾をはじめとする周辺の華僑経済圏諸国に大きな不安を投げかけています。1997年7月1日五星紅旗が翩翻(へんぽん)と翻った香港の中国返還をこの目で目撃し、多くの知人が香港に在住する筆者オービット太郎としては、複雑な感想を覚えざるを得ません。 目を日本国内に移してみると、鳴り物入りで開始された教育改革は大枠が決まったものの、なかなか前に進まず、大きな問題となっています。今回の教育改革は70年に1回と言われるかなり大がかりな大改革と言われています。改革・変革のポイントがてんこ盛りで新しい教育の全体像と個々の改革の目的が見えにくく、全体の教育制度設計が中途半端。この改革はなかなかの難産です。
(1)OECDのEducation2030の枠組みに沿った学習指導要領の大改訂
※ Education2030(2018年2月)https://www.oecd.org/education/2030-project/about/documents/OECD-Education-2030-Position-Paper_Japanese.pdf <背景> 下記のような、社会の急激な変化に対応する教育が望まれています。 ▲地球規模の環境問題や貧困等に対応する地球市民育成を可能にする教育。 ▲生命科学の急速な発展による人間の長寿化と社会の変化に対応できる教育。 ▲AIと人間がうまく共存できる地球市民育成を可能にする教育。 ▲想定できない事態や急激な社会変化が起こる社会の到来に対応できるスキル育成を可能にする教育。 <社会変化に対応する新しい学力観と学びのありさまの変革> ① 学力の3要素 ○知識・スキル ○思考力・判断力・表現力 ○主体性・多様性・協働性 + 創造性 ② 学びのありさまの変化 → アクティブ・ラーニングの積極的展開 ○主体的な学び ○対話的な学び ○深い学び(2)新しいタイプの学び(深い学び):探究科目の導入
大学で必須となる問題意識とリサーチスキルを養成する6つの選択科目と1必修科目。 →生徒の興味の喚起とテーマ・課題設定と探究スキルの学習 『基礎理数探究』『理数探究』『世界史探究』『日本史探究』『地理探究』『古典探究』(選択科目)と『総合的な探究』(必修)(3)大学入試改革と継続教育の推進
①大学入学共通テスト(2020年度から実施) 従来大学入試センター試験に変わる【大学入学共通テスト】に関する様々な方法・技術論の問題点が噴出。50万人以上の受験者を想定した対応が間に合わないことが主な問題となり、下記2点が延期となりました。 A.当初予定された数学・国語の記述問題導入 → 実施延期 ただし、知識から思考力へと問題傾向の比重が移ります。国立大学では2次試験が記述形式で、従来から表現 力・思考力問う問題が多く、この傾向が強まると思われます。 B. 英語科は文部科学省が認定した英語外部試験を利用 → 実施延期 鳴り物入りで導入を予定された外部試験の実施延期で、今回の改革に大きく後退のイメージがついてしまったの は致し方ありません。 ?英語外部試験利用では先行する私立大学 多くの難関私立大学は、大学入学共通テストとは独立して、既に英語外部試験を利用する入試を行っています。 本来、一定以上のアカデミック英語のリテラシーを持つ学生を選抜することが条件なので、作成の手間がかかる独自の入試問題を作成する必要ありません。今後、外部試験採用大学がますます増加すると思われます。例えば、立教大学は、2021年度から「英語」の各学部独自入試は廃止。文部科学省が認定した7つの英語外部試験(ケンブリッジ英語検定、実用英語技能検定、 GTEC、IELTS、TEAP、TEAP CBT、TOEFL iBT)のスコアがあれば出願できるようになります。この大学は【大学入学共通テスト】の英語のスコアも使えます。(続く)
(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2020年2月号(2020年1月20日発行)に掲載された内容です。