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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】増えるAO入試

2019.06.14

一昨年頃から、文理融合系学部や専門科目の授業を英語で行う学科・コースが大きな注目を浴びています。難関国公立大学や私立名門大学が、競うようにこのような学科・コースを創設・拡充しています。新しい時代の後押しもあり、人気も上昇しています。 内容・専攻・課題、教育・研究のアプローチはそれぞれ異なりますが、これらの学科・コースに共通しているのは、様々な方式のAO入試を積極的に採用していることです。AO入試は、(試験のみで選考する一般入試より)良質でモチベーションの高い学生が獲得できるので、多くの大学では他学部への展開と定員増加を検討しています。 2020年度の大学入学共通テスト(=新テスト)開始をきっかけに、一般入試(=新テスト+大学ごとのテスト)経由で入学する学生数が減少。AO入試経由で入学する学生比率が増えそうです。数年後には、難関私立で約6割、国立大学で約4~5割になると言われています。(逆に、一般入試枠の定員は必然的に大きく減少します)

なぜAO入試が評価されるのか?

<大学側からの視点> ①多様な学生(出身地・国、外国語能力やICTリテラシーなどの特異な能力 など)が獲得しやすい。 →大学は複数種類の入学条件を設定できます。 ②志望する学生の特質をみきわめ、大学・学科のアドミッションポリシーと丁寧に照合することができます。(学科・コースの選択ミスが最小限に抑えられます) ③高校時代の具体的かつ詳細な活動を記録し、大学が参照できるため、学生の特質を具体的に把握できます。(活動報告書、ポートフォリオ) ※従来の一般入試の場合:学生たちは、やりたいこと(=専攻、将来就きたい職業、働いてみたい国・地域)ではなく大学のイメージやブランド、模擬試験の偏差値の高い大学を決める傾向がありました。指定の入試科目がその学生にとって受験可能あれば、専門分野の内容如何にかかわらず受験が可能です。中には、難関有名大学の法学部、文学部、経済学部等、受験可能な学科をすべて受験する学生が出てきます。これでは、本当に学生の特性に適する学科・専門分野は選択できません。この方式では、研究力・教育力や国際化度向上より大学のブランドを上げることが優先項目になってしまい、本質的に良質な学生の獲得が難しくなってしまいます ④大学が履修科目を工夫することで、積極的に提携留学(学期・1年間)に誘導しやすくなります。 →良好な就職実績にもつながります。 <学生側の視点> ⑤自分の志望に適応する大学・学科を探し、学生の強み・体験をアピールしないと合格に結びつかないため、下記のポイント等に関して、志望大学をよく研究するようになります。 ・そのコースで行われるカリキュラム(科目・プロジェクト)や教授陣の研究テーマ ・その学科で履修に必要な前提科目と知識・スキル ・留学や英語による授業を可能にする英語運用力 ・可能なら身に着けたい第三言語 ・卒業後就職可能な職種、取得可能な大学院の学位(修士等) ⑥大学・学科の特徴・強みを理解して入学してくる学生が多いため、目的意識が明確かつモチベーションが高い。履修計画に留学も含み、入学当初から戦略的です。したがって、成績も良好。その後の進路(就職・大学院進学)において成功する確率が高くなります。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2019年6月号(2019年5月20日発行)に掲載された内容です。)