【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】世界が変わる、社会が変わる、学びが変わる②
2019.03.14
超スマート社会(Society5.0)
・人工知能(AI)とネットワーク技術の発展により、フィジカル空間(現実社会)とサイバー空間(ネットワーク上の空間)が高度に融合されます。 ・「IoT(Internet of Things)」で全ての人とモノ(=デバイス)がつながり、様々な知識や情報を瞬時に共有することが可能になります。 こうした社会では、従来人間が担ってきた様々な定型的な仕事や、数値で表現可能な(=プログラミング可能な)役割・仕事は、今後急速にAIにとって代わられると言われています。今後人間こそが担うべき役割には、どんなものが残るでしょうか?
超スマート社会で人間が保持すべき力、獲得すべき能力
人工知能(AI)が苦手で、人間にとっては獲得可能な下記の4つの力-能力を育成することが今後の鍵になります。1. 現実の世界を理解し、様々な社会状況に意味付けできる確固たる感性、倫理観をもつこと ? 幅広いリベラルアーツ、豊かな体験を通じて 2.異なるグループ間での板挟みや想定外の事態に正面から向き合い、調整する力や責任をもって遂行する力 ? 総合的な企画力、マネジメント力 3.イノベーションを生み出す芸術的な表現力、感性やデザイン思考 ? 想像力、アート 4.全く複数の異なる分野の知識や発想を活用、統合し、新しいプラットフォーム、構造、制度を構想する力
この4つの能力(=コンピテンシー)を育てるには、中等教育段階までに他者と協働した「アクティブラーニング」と「PISA型学習」が有効におこなわれることが重要です。3つのアクティブラーニングとPISA型学習
◎3つのアクティブラーニング アクティブラーニングとは、言葉通り一方通行でない能動的な学習のことですが、次の3つの側面を持ちます。1.「主体的な学び」……学ぶことに積極的な興味、関心を持ち、自己の今後のキャリア・方向性と関連付け、見通しをもって粘り強く取り組むこと。(興味のあること、今後やりたいことに関連させて学んでいるか?) 2.「対話型な学び」……教員との対話、異なる文化背景や特性をもつ生徒同士での対話を通じ、自己の考えを広げ深めること。(多様性の高い学習環境を選択したか?) 3.「深い学び」……習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「考え方」を働かせながら知識を関連付けて深く理解したり、情報を精査して考え方を形成しながら問題を見出して解決策を考えたりすること。
◎基礎的なPISA型学力各教科の基礎知識の習得が必要であることは言うまでもありません。しかし、社会のいたるところにデバイスが存在する超スマート社会では、知識はいつでもどこからでも入手できるようになります。以前ほどは知識の記憶の重要性が無くなり、学習の重点が4つのリテラシー(※)(「獲得した知識を活用する能力」「いかに必要な知識を選択するか?」「情報の正誤判断能力」等)に移行しています。
<4つのリテラシー>・読解力(基本的な言語技術……読み・書き・話す・聞く能力) ・数学的リテラシー(数学の概念・表現を読み表現する力、数学的に推論・探究する力) ・科学的リテラシー(理科科目で必要な考え方・認識、基本的な表現方法) ・ICTリテラシー(Information and Communication Technology……情報通信技術を駆使して様々な情報を活用する力)
※リテラシー(literacy):もともとは「読解記述力」を指し、転じて「(何らかのカタチで表現されたものを)適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する力」のこと。(続く)
(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2019年3月号(2019年2月20日発行)に掲載された内容です。)