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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 今後STEMと文系のダブル教育がエリートの条件となる③

2017.09.14

アストロバイオロジーが発展 地球外生命の発見が予想されている

今世紀に入ってから、アストロバイオロジー(宇宙生物科学)という新しい学問分野が注目されています。NASA(アメリカ合衆国航空宇宙局)の造語で「宇宙における生命の起源、進化、伝播および未来」を研究する学問のことです。生物学を中軸に天文学、惑星科学、生化学、地球物理学、地球科学、微生物形態学、分子進化学(遺伝子の情報から進化のしくみと道筋を明らかにしようとする学問)、比較生理学など、「宇宙と生物」が関連していれば、ほとんどがアストロバイオロジーの範疇に入ることになります。 この分野に関する画期的な発見が数多くなされています。例えば、地球に落下する隕石や小惑星・木星や土星の衛星からは生命の源となる様々な有機物が既に発見されています。各国が様々な探査機を打ち上げて、これらの天体に接近・着陸探査を試みています。多くの成果が上がっているので、細菌レベルの「地球外生命」の発見はそう遠いことではない」という意見を述べる学者が増えているようです。

土星の衛星「エンケラドス」に生命が存在する可能性

アメリカのNASAが打ち上げた土星探査機カッシーニは、2004年以来、土星の幾つかの衛星を探査し、多くの発見をしています。特に極寒の土星の第2衛星「エンケラドス」の地表の割れ目に、周囲の温度より150℃以上の高温の場所を発見。そこから宇宙空間に何と水が噴出していました。厚さ30~40kmの氷の層の地下には、内部海と言われる液体の海が存在していたのです。人類が初めて手に入れた地球外の海水です。この海水を分析してみると、地球と同じような塩や二酸化炭素、そして多くの有機物が溶けていました。 2015年には、地球上の海底熱水噴出孔や温泉にみられるナノシリカ(二酸化珪素)という物質を発見。ナノシリカが生成されるには90℃以上のアルカリ性の熱水が必要です。「エンケラドス」には有機物・水・エネルギー(熱)という生命体生存に必須な3つの基本要素を保持していることになります。また、噴出する海水の中に、熱水噴出孔の化学反応でできる水素原子も発見されています。地球上でも、海中の熱水噴出孔で生きる微生物(太陽光の熱に依存しない微生物)にとって、水素はなくてならないエネルギー源(=食べ物)です。エンケラドスには生命の食べ物が存在していることになります。 残念ながら、探査機カッシーニは本年9月に13年にわたる使命を終了、土星に突入します。エンケラドス以外にも木星の衛星エウロパ、ガニメデにも同様の内部海があると言われています。今後カッシーニの功績を引き継ぎ複数の国際探査ミッションが予定され、地球外生命発見が期待されています。

地球外生命発見が与える哲学的問い

もし、地球外生命(たとえ細菌のような微生物であっても)が発見され、様々なことが解明されると、自然科学上の大きな発見にとどまらず、人類に大きな問題提起を投げかけます。 ・「生命現象の意味とは」 ・「地球上の生命はどこから来たのか?」(隕石等を通じて生命は宇宙空間を伝播するのか?) ・「旧約聖書のノアの箱舟の象徴的意味」 ・「我々は孤独ではない?!」(地球上で約20億年にわたって進化、多くの種を生んできた我々(=We)とは別の系統の種が宇宙に多数存在する可能性) ・「人類にとっての神」 など、根源的で哲学的な問いが発せられ、多くの地球規模の問題を汎宇宙的な視点で捉え直す必要が出てきます。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2017年8月号(2017年8月20日発行)に掲載された内容です。)