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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 教育のグローバル化競争が本格化する その④

2017.03.14

「グローバル・コンピテンシー」を向上させるにはどうしたらいいのか?

この分野はこれまでの3分野と異なり、日本人が苦戦しそうな分野です。次の2点から日本は「グローバル・コンピテンシー」を育てるには極めて不利な環境です。

①島国という環境…異文化を背景とする人々と交流する機会が極端に少ないこと。外国語を使う機会や必要性がほとんどないこと。

②周囲からの無言の同質性圧力(周囲の人と同じ感覚や意見を持つことを何となく強要され、「同意しないと仲間はずれになってしまう」無言の圧力)に絶えずさらされる風土。

逆に、私達が居住するシンガポールは、次の3点で、極めて恵まれた環境と言えます。

① ダイバーシティ(多様性)が高いこと。多民族、多宗教、多文化の環境なので自らが周囲と異なることを表現しやすい。

② 長期滞在外国人が多いので、各種スポーツクラブ、音楽教室、バレエ教室等で外国人と容易に交流ができる(滞在1年以上の外国人は、シンガポールの人口の何と約30%。ちなみに日本に滞在する外国人は2%未満)。

③ 安全度が高く、子供同士で公共交通機関を利用でき、買い食いや買い物など、気楽に海外体験が楽しめるアジアで数少ない都市であること。

当地で「グローバル・コンピテンシー」を向上させるには、日本人学校、インター校を問わず、「あらゆる機会を利用して、シンガポールという環境をうまく利用し、海外体験をすること」に尽きます。異なる言語を使い、異なる宗教を信仰する民族が周囲にいることが普通になり、彼ら(彼女ら)との付き合い方を感覚的に身に着けることはさほど難しいことではありません。 夏休みの度に、必ず一時帰国するご家庭の話をよく聞きますが、「せっかくの海外駐在を利用して、お子さんが海外体験をする機会」を失うことになります。特に2~3年の比較的短い駐在の方は、できれば当地シンガポールに滞在するか、周辺各国を家族旅行し、アジアの多様性や豊かさを感じる体験をすることをお勧めします。目的地に関する小リサーチを家族で分担し、旅行後に話し合うのもとても貴重な経験です。いずれの3分野も暗記した知識はほとんど必要としない問題解決型問題が出題され、将来の大学教育やビジネスで必須とされるスキルや資質を調べるものになっています。

「グローバル・コンピテンシー」に関するアンケートの例

Q.1 次の事柄を何ヶ国語で言えますか? ① 挨拶をする ② どこにトイレがあるか尋ねる ③ レストランで注文する ④ 数分間会話する ⑤ 自分の感情、心情を表現する

Q.2 以下の質問に対して、1.強く同意する、2.同意する、3.同意しない、4.強く否定する ① 他の国の人々がどのように生活しているか知りたい。 ② 多様な宗教について知りたい。 ③ 他国の交換留学生を招待したい。 ④ 他の国の文化が奇妙にみえても、意見をすぐに固めない。 ⑤ 他の国(民族)の食べ物を試食するのが好きだ。 ⑥ 外国語で間違えたとき、うっかり間違えたと笑い飛ばせる。

Q.3 次のトピックについてどの程度知っているか評価しなさい。 ① 気象変動と地球温暖化 ② 移民 ③ 貧困の原因 ④ 超高齢化の影響 ⑤ 世界中の男女の権利について

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2017年3月号(2017年2月20日発行)に掲載された内容です。)