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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 2020年に導入の新センター試験 その②

2016.11.14

2種類のテスト実施の意味…複線系教育制度への転換

従来のセンター試験は、あくまで1種類のテストを年1回斉一(せいいつ)実施する、従来からの伝統的な形式を採用してきました。国公立大学の受験希望者は基本的には全員受験必須です。 今回の改革では、大学入学希望者学力評価テスト(以下略称学力評価テスト…難易度高)と高校基礎学力テスト(以下略称基礎学力テスト…難易度低)の2種類が実施されます。大学はそれぞれ必要とされる学生の学力に合わせて実施する試験を選択できる仕組みに変更します。無論、難関大学受験者は学力評価テストを受験。基礎学力テストは、国語、英語、数学の基礎テストで、実質、高校卒業認定のようなテストになります。 難易度の異なる2種類のテストを実施することで、学力評価テストは、必然的に従来のセンター試験より難化。PISA型学力観に立脚した思考力、判断力、表現力を重視する記述式を含むテストになります。 すでに進み始めている、グローバルなエリート教育を志向するグローバル型大学(=G型大学)と、実践的な職業教育に特化するローカル型大学(=L型大学)の2分化に対応したテスト実施を目指しています。 「誰でも同等の教育が受けられる単線系教育制度」を崩し、「それぞれの目的やレベルに合わせた、複線系の教育制度」への基本方針転換を図るという、文部科学省の決意の表れとみることができます。

複数回の実施を見据えたテストの制度設計

年1回斉一実施の現行センター入試では、「一発勝負に強い学生」が圧倒的に有利です。従って、大手大学受験予備校では、試験の得点力アップのテクニックを練成する「センター試験対策」が主力講座の一つになっています。しかし、1回の試験結果では「勉強意欲が高く、様々な能力を持っている受験生を必ずしも選考できない」という批判があり、TOEFLやアメリカのSATのような複数回実施の要望が高まってきました。 2020年実施の初回では、記述式問題を含んだテストを約60万人採点するという技術的問題から、複数回実施は今後の課題として見送られました。しかし、近年のAI(=人工知能)の発展からすると、潤沢な予算措置を講ずればAIを使った自動採点は3~4年後に可能になると思われます。 文部科学省も、当然こうした次の段階を見据え、CBT方式(Computer Based Test)を採用します。複数回実施から将来的には随時実施にまで広がる今後の展開を可能にするテストを作成する意図があることは間違いありません。

CBT方式→複数回実施→日本型AP※の流れ

学力評価テストが複数回実施できるようになると、日本型のAPが比較的容易に実施できるようになります。日本型APのカリキュラムを作成、大学基礎科目のテストを実施し、優秀な学生は高2の三学期か高3の一学期でAPレベルのテストを受験、一定以上の得点ができれば大学入学にきわめて有利になるような制度が構築できます。 この制度ができると、大学受験という大きな負担が半減し、高校-大学継続教育が実現することになります。東大、京大等の難関大学は、この日本型APを履修している優秀な学生に優先的に入学許可を与え、学士課程で更に高度な教育が可能なります。

(終わり)

※AP:Advanced Placement アメリカで実施されている単位飛び級制度のこと。優秀な学生は高校在学中に大学での基礎科目を履修。大学入学後、該当単位が免除になる。ハーバード大学、スタンフォード大学、UCバークレー等のトップ大学入学者の多くは、APを2~3科目履修している学生が多い。 (本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2016年11月号(2016年10月20日発行)に掲載された内容です。)