【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 ランキング競争で苦戦する日本の大学②
2016.09.14
心配される日本ブランドイメージの低下
世界的に認知度の高い国際大学ランキングで日本の大学評価が軒並み落ちています。これらの一つ「The Times Higher Educationアジア大学ランキング2016」において、シンガポール国立大(NUS)、ナンヤン工科大(NTU)が第1位、第2位に輝き、日本の双頭のフラッグシップ大学である東大が1位→7位、京大が9位→11位に転落したことの意味はかなり大きいと思われます。 アジアでは従来トップレベルと言われていた日本の大学の評価が下がると、日本そのもののブランドイメージの低下を招きかねないからです。ご承知のように、日本の電化製品のかつての勢いは見る影もありません。また、スマートフォンの世界では日本ブランドはほぼ消滅、アップルとサムソンの戦いになっています。 30歳以下のシンガポール人に日本のイメージを聞くと「自然が豊かで人々が優しく、食べ物がおいしい物価の安い国家」というイメージが定着しているようです。1990年代世界中に広まった「ハイテク国家日本」というイメージは今は昔の話です。国際ランキングはどんな項目で評価されるのか?
アジア各国の大学評価の方法は、グローバル化の急激な進展の中で、大きく変わってきました。プレステージ中心の国内大学ランキング(日本では単純な入試難易度としての偏差値)から複数項目のポイントの合計から評価される国際大学ランキングへ急速に転換しています。 国際大学ランキングは教育(環境)の優劣、研究のレベル、大学の教職員が作成する研究論文の学問領域への影響力・社会へのインパクトの指標である論文被引用数、教育・研究環境の国際化度、企業からの収入などの項目にポイントがつけられ順位が決まります。 これらの評価基準は、近年は2~3年ごとに評価の比重や調査方法やリソースが変わり、ランキングの変動に大きく影響します。 「The Times Higher Educationアジア大学ランキング2016」では、研究収入効率や企業からの収入(投資)等の項目の比重が高まり、大学の研究収入や国家の文教予算が伸び悩んでいる日本の大学には極めて不利な展開になっています。京大を除く大学はこの点でポイントを落としています。一方、シンガポール、中国、韓国の上位の重点大学に企業、政府が集中的に資金を投資、ポイントを大きく上げ、ランキングの上昇と大学のブランドを上げることに直結しています。国際化度を上げないとランキングが上がらない…英日2言語教育を
このランキングの国際化度では、①留学生比率、②外国人教職員比率、③国際論文比率 (それぞれ2.5%、合計7.5%)の比重が日本のSGUで大きな課題になっている項目です。実はこのポイントは「共通学術言語や学内言語が英語である」ことを前提にしないと勝負になりません。いつもお話ししているDLE(Dual Lingual Education…二重言語教育)が必須になるわけです。 論文被予算引用数(30%)は最重点項目の一つです。このランキングでは、2016年からエルセビア社のスコーパスというデータベースを利用、1130万の論文と5100万の文献から引用数を集計しています。収録されている元資料はほとんど英語で書かれています。また、教育・研究に関する評判調査(合計25%)や企業からの収入(7.5%)という重要な項目も日本語という民族語で閉じた世界で活動していると不利に働くことは言うまでもありません。(続く)
(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2016年9月号(2016年8月20日発行)に掲載された内容です。)