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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 変わる英語の学力観Ⅰ

2015.06.14

従来の日本の中高生が目指した英語学習のゴールは、大雑把にいえば「入試問題で正解を得るために必要な知識と解答技術獲得」と言っても過言ではありませんでした。生きた言語習得としての英語学習ではなく、試験突破を主目的にした英語学習。しかも日本の入試問題は大学ごとの個別入試で、出題のユニークさを競う傾向が強いため、求めている学力観やレベルがまちまちです(予備校の人気講師の8割は英語が話せないと言われています)。入試の結果は総合的な英語力の指標にはなりません。懸命に受験勉強して難関大に合格しても、グローバルな英語の運用能力がつかないのは周知の事実です。いったん大学に入学してしまえば、2度と入試を突破するための英語力は問われません。高等教育におけるアカデミックなリサーチ、プロジェクトワークや討論の場においては英語運用能力も必須のはずですが、その能力は就職活動の際のTOEICというビジネス寄りの実践的なテストで判断されたりします。 外国語学習にとって最も大事な10?12歳の時期を中学受験用の日曜のテスト準備に明け暮れ、中学生以降も様々な異なったゴール(獲得すべき学力)を目指さなければならない日本の生徒たちは気の毒です。日本の学生がアジアで最低レベルの英語力であること(TOEFL受験者国別平均点〈2014年〉16ヵ国中13位)というのも頷けます。日本人の資質が低いのではなく、的外れで時代遅れの異なった目標設定と、不合理で非効率な学習システムを引きずっていることが主な原因の一つです。

「マニアックな入試で正解を解答できるか」⇒「英語で何ができるか?」への転換

海外では一貫した尺度にしたがって「英語で何ができるか」を判断することからカリキュラムを構築し、読む・書く・聴く・話すの基本4技能のバランスの良い伸長を図ることが常識になっています。 現在、世界で最も一般的に広がっているのが、EUで考案され長年検証され、2001年に発表されたCEFR※です。地続きのヨーロッパ、国際結婚は当たり前の家族の中で数か国語が飛び交うことが珍しくない環境で作られただけあって、英語だけでなく外国語能力に関する汎用的指標です。日本でもこれからの英語教育の中心的基準になりそうな重要な指標です。 ※CEFR:Common European Framework of Reference for Languagesの略称。語学のコミュニケーション能力別のレベルを示す国際標準規格として、欧米で幅広く導入 されつつある。

(続く)

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2015年6月号(2015年5月20日発行)に掲載された内容です。)