【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 東大のPEAKで合格者の約7割が入学辞退?
2015.05.14
3月末に表題のようなニュースが報じられました。これは2010年10月に東大が鳴り物入りで駒場キャンパスに設置した『教養学部英語コース(PEAK)』のことです。外国人留学生と、海外で初等・中等教育を受けた日本人を対象とし、授業はすべて英語で行われ、2年の前期課程の『国際教養コース』を履修後、後期課程の専門コースで『国際日本研究コース』か『国際環境学コース』の専門コースで学びます。 明治以来、日本の大学教育の頂点と自他ともに認めてきた東京大学(L型大学)が初めて熾烈な国際競争に身を置いた(G型大学)最初の試みといえます。結果は予想どおり厳しいものでした。 以下、志願者のデータを見ると、明らかに併願大学としての評価が既に定着してきているのがわかります。辞退率が3年連続上昇し、7割近くになっていること。学生数確保のために合格者数を増やしているので、入学する学生の質が落ち、教育の質が低下し、大学の評価を下げかねない状況です。
L型からG型に転換 国際的な高評価を得ることができるか?
従来、東大もL型大学として国内の評価(偏差値)は、たとえて言うならば「国体か日本選手権レベル」でしたが、今後はG型大学としての世界レベルの熾烈な競争(研究・教育のレベル、国際企業からの評価、留学生からの評価)が待ち受けています。PEAKのレベルは、「オリンピックにようやく出場したがメダルどころか入賞できるかどうか」の瀬戸際のライン。この傾向が続けば「予選落ちのレベル」が定着してしまいます。 日本のフラッグシップ大学としての東大の評価が下がると日本の高等教育の全体の評価が下がりかねません。戦略的なコース作りをしなくてはなりません。ポイントは下記の3点だと思われます。 (1)数理化学、自然科学、工学系等の日本ブランドが使える分野のコースを設置する。 (2)IBで高いスコアを取った優秀な帰国生を積極的に募集する。 (3)コースを教養学部がある駒場ではなく本郷に置く。 上記の分野は大学院まで連続する専門科目のレベルが勝負になります。ノーベル賞級の研究者が多数いるキャンパスで学べることをアピールするべきです。(続く)
(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2015年5月号(2015年4月20日発行)に掲載された内容です。)