人生の岐路となったオービット
江上弘幸さん
シンガポール日本人学校小6から中3まで4年間オービットに在籍。
筑波大学付属駒場高等学校に進学。
東京大学経済学部卒。
シカゴ大学公共政策大学院修士。
金融関連の公的組織に所属。
オービットで培われたグローバル人材に必要な基礎
私は現在、或る公的組織で国際的な金融規制の策定等に携わっており、世界各地で開かれる国際会議や世界中の当局者の集う電話会議に、関与・参加する日々を送っています。こうした国際人としての生活の礎は、小・中学生時代のオービット生活で培われました。今の仕事には、オービット時代に得た高い基礎学力や多様な価値観を理解する力が必須です。高度な学問的素養を前提とする議論に対応できること、世界中の人々の歴史や地理的条件を踏まえ、その多様な価値観を理解することが必要とされるからです。
あらゆる分野に必要な「みえる化」を知る
オービット生活で一番よく憶えている先生の言葉は、「書け、とにかく書きまくれ」です。暗記スパルタ教育のような言葉ですが、なんとこれは数学の指導です。私にとっては、あらゆる分野に通ずる「みえる化」の重要性を教えてくれた、極めて付き合いの長い言葉となりました。今でもいつでも何かを考えるときは問題を書き出して整理し、本質を分かったと感じるまで書き続け、まずは「みえる化」を行うところから始めます。 また、この言葉は努力で才能を補えることを教えてくれました。才能に乏しく閃きで褒められたことのなかった私は、いつもこの「書け、とにかく書きまくれ」を頼りに勉強してきました。とりわけ算数や数学において、幼い頃はとかく天才的閃きをもつ子供が持て囃されるように思います。オービットでは、論理的思考の基礎となる「みえる化」のやり方など、地道な基礎の積み重ねを重視した指導を受けました。こうして中学までに高い基礎学力を身につけることは非常に大切で、私は高校受験のみならず大学受験もほとんどこの貯金で乗り切りました。大学及び大学院で、今の仕事に必要な高度な学問的素養を得るにあたっても、いつも私を支えてくれました。現在、ビジネスやアカデミアの国際的最前線で活躍する仲間たちをみても、天才的閃き型というより、むしろ「閃かなくとも戦える術を知る」というタイプが多いように思います。
常識を疑い、多様な価値観を許容することを知る
また、オービットでは、時事や思想に関する議論が活発に行われ、「常に常識を疑い、多様な価値観を許容する」ことが是とされていました。これはハイレベルなグローバル人材に共通する考え方で、国際社会でバックグラウンドの異なる人間同士が、対等に忌憚のない意見を出し合うには必須です。しかし、残念ながら、日本ではこの考え方が当然とされるコミュニティは余り多くないようです。私にとって、海外で育ち、オービットで学んだことで、小さい頃からこの考えに慣れ親しむことができたことは幸運でした。オービットでの経験は、世界中の人々の歴史や地理的条件を踏まえ、その多様な価値観を理解することが必要とされる今の仕事に大変役立っています。