『先生の本棚 2016冬』 WEB特別版
2016.12.19
毎月発行のオービット機関紙『プラネット』の人気コーナー「先生の本棚」の過去のバックナンバーから抜粋して、WEB特別版としてまとめて掲載しました。
この冬休み、どのように過ごそうか悩んでいるあなた、ぜひこれを参考にして手にとってみてください。
■満仲先生(教室長/国語・社会)
聖の青春(大崎善生/講談社文庫・角川文庫)
おすすめ対象:小学校5年生以上
「東に天才羽生、西に怪童村山」として名を馳せ、念願の名人位まであと一歩という時に29歳の若さで夭逝した将棋棋士、村山聖の生涯を綴ったノンフィクション小説。幼少期から難病に侵され、常に死と隣り合わせにありながらも、名人谷川を倒すべく人生の全てを将棋に懸けた壮絶な姿が、親子愛・師弟愛・同志愛とともに描かれており、将棋に詳しくなくても一気に惹き込まれます。自分は果たしてこれまで彼のように熱く、濃い人生を生きてきたのか、これからどのように生き抜くべきかと、過去、現在、そして未来の自分の人生のあり方を自問自答させられました。人生観が大きく揺さぶられる名作です。ぜひとも若いうちに読んでおくことをお奨めします。(満仲)2016年8月記
■浜田先生(教務主任/英語・算数/数学)
盤上の敵(北村薫/講談社文庫)
おすすめ対象:中学生以上
本ならではの面白さ満載のミステリー。1度読み終わって謎が全て分かると、どうしてももう1回読み直したくなります。固定観念にとらわれて自分がだまされていたことに気が付くからです。しかも読者である「あなた」をだましているのは他ならぬ「主人公」です。2つのストーリーが同時に進行していながら、「だんだん」つながるのではなく、「いきなり」つながって全が分かったときには「やられた!」と思える爽快感が味わえます。マンガやテレビでは、こういった手法は難しいでしょう。本の楽しさを知らない人に、是非お勧めの本です!(浜田)2013年8月記
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■湯田先生(算数/数学)
千葉千波の事件日記 試験に出るパズル(高田崇史/講談社)
おすすめ対象:パズル好きな中学生以上
イケメン高校生の千葉くんと不真面目浪人生2人の3人組が、身近で起きる事件に巻き込まれていく「パズル小説」です。主人公の長い数々の「言い訳」から始まり、一癖も二癖もある登場人物たちのゆるーい雰囲気の中、まさにパズルとしか言いようがない不可解な事件が起こります。千葉くんの披露する凝りに凝った論理が微妙に空回りしながら、なんとなく事件は解決に向かいます。作中にて出題されるパズルも極めて質・難度の高いものが多いため、パズルマニアは必見です。(湯田)2016年9月記
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■内田先生(国語・社会)
ぼく、牧水! 歌人に学ぶ「まろび」の美学(伊藤一彦・堺雅人/KADOKAWA)
おすすめ対象:中学生以上
「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」国語の教材でおなじみの短歌です。その作者、若山牧水の歌と人生が、著者2名の対談形式で語られます。伊藤一彦氏は牧水研究の専門家ですが、私のお薦めポイントは、「半沢直樹」などで知られる俳優・堺雅人氏が語る部分です。言葉だけを美しく磨き上げるのではなく、身体性に溢れた牧水の歌。身体と言葉の両方を使って演じる俳優として、牧水の境地に達せるか…など、堺氏は演劇と結び付けて牧水を論じています。国語の授業とは異なる視点で、短歌を楽しんでください。演劇(drama)に興味がある人も、読む価値アリの 1冊です。(内田)2015年10月記
■畠山先生(算数/数学・理科)
数学ガール(結城 浩/SBクリエイティブ)
おすすめ対象:中学生以上
みなさん、数学の凄さを見つけにいきましょうか。
高校生の3人が数学のいろいろな問題に挑戦していく物語で、中学数学から最新の研究内容まで幅広く登場します。難しいことを簡単に砕いて説明する本ではなく、難しいことを難しいまま本質を理解出来る数少ない良書です。物語の中で解説がしっかり進んでいくので、数学が苦手な人も是非読んでみてください。また小説を題材としたマンガ版もあり、「活字はちょっと」という人はそちらをどうぞ。市販されている参考書の解説を眺めるよりも確実に役に立ちますよ。 (畠山)2016年3月記
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■鮫島先生(算数/数学・理科)
世界は分けてもわからない(福岡伸一/講談社現代新書)
おすすめ対象:中学生以上
学校の理科の実験で細胞を観察するとき、一部を取り出して顕微鏡で観察をします。研究者も同じように一部を取り出して調べるのですが、その一部で起こる現象が全体にも成り立つ保証はなく、もしくは自分の都合の良いように解釈しているだけかもしれません。この本から、科学者が見誤るワケを垣間見ることができます。STAP細胞騒動があった今読むと、より興味深い内容だと思います。専門用語が出てきますが、分かりやすく解説してありますし、ミステリー小説のような読み心地ですので是非挑戦してみてください。オービットの本棚には著者のベストセラー「生物と無生物のあいだ」がありますので、そちらも是非読んでみてくださいね。(鮫島)2016年7月記
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■比嘉先生(英語)
夏の庭(湯本香樹実/新潮文庫)
おすすめ対象:小学校高学年以上
人が死ぬところが見てみたい。小学生最後の夏休み、子供たちの無邪気でちょっぴり残酷な好奇心から、生ける屍のような老人を観察することとなる。朽ち果てた屋敷に住み、頭も禿げあがり、夏でもこたつから離れないおじいさんだったが、やがて子供たちとの距離が縮まるにつれ、日々の生活の中で喜びを見出す。彼らの関係は次第に不思議な友情へと変化し、少年達はこの出会いから多くの事を学び、大人の階段をのぼっていく。「人間の死」というテーマだが、生き生きとしてユーモラスで遠慮のない少年達の会話や行動が、それを爽やかに真っすぐ表現しています。忘れていた好奇心や冒険心、小学生の頃の大親友を思い出し懐かしい気持ちになった一冊でした。(比嘉)2016年12月記
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■井上先生(英語・国語)
「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー(高橋秀実/新潮文庫)
おすすめ対象:小学校高学年以上
このお話は東京の超進学校、開成高校の野球部に焦点を当てたノンフィクションです。グラウンドは一つしかなく、他の部活との兼ね合いで週1回しか練習ができない、しかも、野球エリートなど一人もいない・・・そんな野球部がいかにして東東京予選ベスト16にまで勝ち進んだのか?「練習で実験と研究を繰り返す」「自分たちにとっての必要十分な練習を追求する」などの考え方は、練習時間が限られている開成高校野球部ならではであり、勉強やスポーツに対し「とりあえず時間をかけてやれば良いだろう」と考えがちな私たちに、様々な気付きを与えてくれます。野球を知らない方でも、楽しくかつ興味深く読むことができます。? (井上)2016年11月記
■古川先生(国語・英語)
世界でいちばん素敵な夜空の教室(多摩六都科学館 監修/三才ブックス)
おすすめ対象:小学校中学年以上
「何でシンガポールは星があまり見えないの?」そう思ったことはありませんか?普段気にかけることが少ないかもしれませんが、夜空にはたくさんの神秘であふれています。場所によって星の見え方が違うのはなぜか、オーロラはどうして緑のカーテンのように見えるのか、星は最後にどうなってしまうのか、といった様々な疑問に対してわかりやすく教えてくれる1冊です。難しい説明がないので、高校生の皆さんにとっては天文学への超入門書としてもおすすめですよ。美しい写真も数多く紹介されているので、宇宙への興味が深まること間違いなし!今夜はちょっと外へ出て、夜空を眺めてみませんか?(古川)2016年10月記