日本発・全世界行を目指す科学編集記者 松田壮一郎さん
ORBITでは,勉学だけではなく,人生の礎が養われた
人生の基盤になったホームステイ
ORBITの友人,そして先生方とは今も交流がつづいている。当時の経験は記憶によく残っており,中でも,とくに有意義だったと感じる二つのポイントを挙げたい。
まず一つ目は,中学3年へ上がる春に参加したORBIT主催の「オーストラリアへの短期ホームステイ」だ。科学雑誌Nは純日本産の雑誌ではあるが,取材は国内外におよび,海外の写真エージェント等との直接の交渉も発生する。その業務では,最低限の英語力(実質的に科学界の第一言語でもある)と,異国に対する柔軟さと抵抗のなさが必要とされる。私にとって,その基盤の一つとなっているのは,ホストファミリーや,昼食に通った屋台のおじさんとの何気ない日々である。
このホームステイの時期には,本来,受験学年を目前にした春期講習があり,通常の塾であれば講習を優先すべきと言われるのであろう。しかしORBITでは,受験だけではなく,その先の人生も見すえて,教育をとらえていることを実感した経験でもあった。
苦手な数学にも興味
もう一つは,季節講習のある日,数学の授業での出来事である。後藤塾長が特別に教壇に立ち,「自分で証明できない公式は,使うべきではない」と仰った。裏を返せば,自分で証明できる,すなわち意味を理解する過程と結果的に得られる知識だけが,本当の意味で役に立つ,ということであろう。
この言葉は私にとって金言となり,私はむしろ数学が苦手であったが,興味を失うことはなかった。また,のちの大学受験への取り組み方,また科学への取り組み方を決定づけることにもなった。「常に物事の意味・本質を考える」ことを習慣づけてもらえた,と言えるだろう。
特集記事の取材で訪れているロンドンにて
松田壮一郎