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【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 ノーベル賞について その1

2016.02.15

昨年2015年はたくさんのことがありました。知の無限軌道(=ORBIT)を目指すオービットにとって最も喜ばしかったことの一つは、ノーベル医学・生理学賞を大村智氏、物理学賞を梶田隆章氏が受賞したことです。資源のほとんどない日本が世界に貢献できることの一つは、こうした長期的視野に立ったさまざまな研究の分野だと思います。

梶田隆章氏の研究はスーパーカミオカンデという巨大な観測器械を駆使し、宇宙線にふくまれるニュートリノ※1を観測。ニュートリノは質量が0であるというそれまでの定説を覆し、ニュートリノは質量を持つ証拠…ニュートリノ振動といわれる現象を発見、1998年に発表。宇宙創成にかかわる基本的な理論の枠組みを変えた画期的な発見と言われています。ニュートリノのふるまいを中心とした素粒子物理学は新たな展開を始めています。

大村智氏は、アフリカなどの熱帯地方における風土病で、全世界で毎年1800万人が感染し、2割以上の感染者が失明するとわれているオンコセルカ症や、足が象のように腫れ上がるリンパ系フィラリア症の特効薬の開発につながった放線菌を発見。大村氏の発見をもとに、アメリカの製薬大手のメルクが化合物を精製、寄生虫病に効く薬「イベルメクチン」が開発されました。この薬で毎年約2億人が恩恵を受けているといわれます。「細菌から抽出した生理活性物質※2からの新薬開発」を長年手掛け、この薬の開発で医学・生理学賞を受賞しました。

1901年に始まったノーベル賞のうち医学・生理学賞、物理学賞、化学賞、経済学賞の4賞の歴史はそのまま、科学者たちの苦闘と発展の歴史です。受賞した科学者たちの研究は、「真理追究の不撓不屈の努力の結果」であり、必ずや人類の発展に大きく寄与する業績にたどりつきます。

ノーベル賞の受賞研究はどんな研究から選ばれるのか?

大きく分けると次のような3種類の研究から選ばれます。
① 対象の学問分野の常識・定説を覆すような大きな衝撃を与えたレベルの研究。
② 研究によって、人類の健康・安全が画期的に改善される研究。
③ 革新的なテクノロジーのもとになった基礎研究。

どんな特性を持った研究者が受賞する可能性があるのか?

受賞者の特性としては次の2点が重要だと多くの受賞者たちが語っています。
① 何事にも強い好奇心を持っていること。(これが1番だそうです。)
② 固定観念を持たず、常識や定説に対して疑い、なぜ?という問いを常に持ち続ける精神性を持っていること。

ノーベル賞級研究を産む体制とは?

こうした画期的な研究が可能な柔軟な発想を持つ人材がいても、研究を支える次のような体制が無ければ研究は成就しません。
① 性急に結果が出なくても、トライ&エラーを許容する研究環境とマネジメント。
② 国家に中長期的研究に予算を投下できる国力があること。

結果が出ないと次年度の予算を削減するような見識の低い行政と性急に結果を求める研究体制からは短期的な研究しか生まれません。日本では1980年代から1990年の中頃までは結果がすぐ出ないことに比較的寛容でした。事実、2001年以来15年間で13人がノーベル賞(4賞)を受賞しています。これは国別ではアメリカ、イギリスに続く3位です。

(続く)

※1ニュートリノ:宇宙のすべての物質はクウォークとレプトンという素粒子から構成されています。レプトンのうち電荷をもたない素粒子をニュートリノと言います。

※2生理活性物質:生体に作用し、種々の生体反応を制御する化学物質の総称

(本記事は、オービットアカデミックセンター会報誌 プラネットニュース 2016年2月号(2016年1月20日発行)に掲載された内容です。)

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